現役 保険営業マンの保険備忘録

保険の選び方や保険業界の裏側など、保険業界に関わって学んだことを備忘録的に書いています。

必要保障額の参考値(生保編)②病気・ケガ

■生命保険で備えるリスク

①死亡

②病気・ケガ

 1)医療費

 2)生活費

 3)介護費

③長生き

 

前回は①死亡について必要保障額の目安を書いていきました。

今回は②病気・ケガについて書いていきます。

ただし、お客様それぞれの状況によって必要保障額は大きく変わりますので、一つの目安として参考にして頂けたらと思います。

なお、必要保障額の算出方法や目安についてはネット上にも様々な情報がありますので、ご自身でもお調べになってみて、考え方にマッチするものを参考にして頂くといいのではないかと思います。

 

②病気・ケガ

1)医療費

まず医療保険というと医療費を頭に思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

たしかにガン治療などで高額な医療費が掛かるというイメージがあるので、それに備える必要性を覚えている方が多いのは不思議ではありません。

ただ、日本は非常に社会保障制度が充実しているので、まず知っておいて欲しい制度は高額療養費制度です。

ご存じの方も多いと思いますし、使ったことのある方もいらっしゃるかもしれません。

これは医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額を支給するという制度です。

この制度により、一般的なサラリーマン世帯(年収約370~約770万円)なら月間の医療費は概ね10万円以内に収まります。

上限額の計算式は80,100円+(医療費-267,000)×1%です。( 年収によって計算式は変わります。)

注意しなければいけないのは、保険証が適用されない食事代や差額ベッド代、その他雑費は全額自己負担であること、あくまで1ヶ月毎で計算するので、仮に16万円かかったとしても、1ヶ月目8万円、2ヶ月目8万円だった場合、上限の範囲内と判断されることです。

あとは申請をしないと支給されない点も注意が必要です。

最近は事前に加入している健康保険組合協会けんぽ、または市町村(国民健康保険後期高齢者医療制度)などに申請をして、「認定証」などを入手して頂くことで、月ごとの上限額を超える分を窓口で支払う必要がなくなるようになっていますが、これも知らなければ利用できない制度です。

医療保険を検討する前にまずは社会保障制度をしっかり活用して頂きたいと思います。

 

その上で個人的にポイントにしているのは、以下の6点です。

1、医療費全額保障 or 最低限保障

これはお客様のご意向次第ですが、個人的には医療保険は元が取りにくい商品だと思っているので、最低限の医療費の確保+後述の一時金で三大疾病などに対して手厚い保障を確保することをオススメしています。

 

2、一定期間の保障 or 一生涯の保障

これもお客様のご意向次第ですが、医療保険は医療リスクの高まる60歳以降に利用する機会が増えることを考慮すると一生涯の保障が望ましいと思います。

一定期間の保障を上乗せするために定期保険を活用するのはありだと思いますが、定期保険のみだと更新の度に保険料が上がっていくので、老後の保険料が高額になり継続することが困難になるリスクがあると思います。

 

3、三大疾病による保険料払込免除 or 何事もなければ保険料が戻ってくる保険

これは医療リスク、特に三大疾病へのリスクを重く捉えるかどうかでどちらがいいかは変わってきます。

医療リスクを重く捉えるのなら三大疾病になって一定の条件を満たした場合に保険料の払込免除になる方が望ましいと思います。

保険料が戻ってくる保険は終身払いである代わりに60歳や70歳など指定したタイミングでそれまで払った保険料が戻ってくるので、60歳以降の医療リスクに備えつつ払った保険料を老後資金としても活用できる方がいいと思う場合は選択肢に入るかと思います。

後者の方が保険料は高くなる可能性が高いので、実際に設計して比較してみるといいと思います。

個人的には保険料の払込免除をオススメしています。

この辺はまた別記事で詳細書いていきたいと思います。

 

4、長期入院に対応できるか

入院は短期化してきており、60日以内の入院が9割と言われています。

ただし、本当に怖いのはそれを超える長期入院なので、個人的にはせめて三大疾病の入院に関しては入院日数制限無制限にしておくことをオススメしています。

 

5、まとまった一時金を受け取れる内容になっているか

治療内容に左右されず自由に使える一時金が給付されるか否かは経済面に大きく影響すると思います。

最近は入院に対して一時金で保障するタイプの商品も出てきています。

保障範囲が広い方が望ましいのはもちろんですが、その分保険料も嵩みやすくなります。

個人的にはせめて三大疾病に対してはまとまった一時金を設定することをオススメしています。

 

6、三大疾病は広い三大疾病で保障される内容になっているか

ここまで何度か「三大疾病」というワードが出てきましたが、実は三大疾病は書き方によって保障範囲が大きく異なります。

狭い三大疾病・・・ガン、急性心筋梗塞脳卒中

広い三大疾病・・・ガン、心疾患、脳血管疾患

どう違うかというと、心疾患の一部に急性心筋梗塞があり、脳血管疾患の一部に脳卒中があります。

例えば死因から見ると急性心筋梗塞は心疾患の約20%です。

急性心筋梗塞しか保障されない商品では残り約80%の心疾患は保障されませんので、三大疾病の中身は必ず確認が必要です。

 

このあたりを踏まえて検討して頂ければ、そう悪い内容の商品に加入することはないのではいかと思います。

なお、保険料払込免除の条件や三大疾病一時金の給付条件などは各社大きく異なりますので、必ず内容確認をしておくことをオススメします。

保障範囲が広かったとしても、給付条件が厳しかったら保険金受け取れないですからね。

 

2)生活費

最近流行りの保険の一つがこの仕事ができなくなったときの生活費を保障するタイプの商品です。

一般的には就業不能保障と言われたりします。

リスクとしてはカバーしたいものではあるものの、個人的にはあまりオススメをしていはいません。

理由は2点で、給付条件が厳しいことと保険料が安くはないことです。

比較的条件が緩い商品でも「60日以上の労働制限」が条件となっています。

たしかにその状況に陥ったら非常に助かる保障ですが、その状況に陥る確率を考慮すると保険金を受け取りにくい商品かなと思っています。

もし三大疾病に限った話をするのなら3大疾病の一時金を厚くすることでカバー、自動車事故に関しては自動車保険でカバーする方が資金効率としてはいいかなと思っています。

 

3)介護費

介護のリスクに対しても備えたいと考えている方は非常に多いと思います。

介護は65歳以上の方には約18%、75歳以上の方には約33%の確率で起こりうるリスクだと言われています。

ただし、65歳以上の方には公的介護保険制度から一定の保障が受けられます。

それまでに十分な資産形成をすることができれば、敢えて掛け捨ての医療保険で介護保障を確保する必要はないでしょう。

65歳未満の介護状態に対しては公的介護保険制度からの保障がほぼ受けられないので、ここは備えておく必要性があります。

ただし、民間保険で保障されるのは概ね要介護2以上の状態になったときです。

要介護2とは以下のような状態です。

  • みだしなみや掃除など身の回りの世話の全般に助けが必要。立ち上がりや歩行、移動になんらかの支えが必要。 
  • 排泄や食事に見守りや手助けが必要なときがある。問題行動や理解の低下がみられることがある、など。
  • 日常生活のなかの動作に、部分的に介護が必要。

65歳までにこの状況に陥るリスクで真っ先に思い浮かぶのは自動車事故です。

逆に言うとそれ以外の理由でここまでの状況に陥る確率が低いと判断できるのであれば、自動車事故は自動車保険でカバーするというのも一つの考え方です。

自動車保険の人身傷害保険に車外危険補償特約を付けることで、契約車両に乗車中の事故だけでなく、知人の自動車に同乗中の事故、歩行中の事故も補償対象になります。

つまり、自動車事故についてはほとんどカバーできるということです。

これについてもまた別記事で詳しく触れていこうと思います。

 

保障はないよりはあった方がいいものですが、保障を厚くすればするほど保険料も嵩みます。

そして、そもそも保険金が給付される状況に陥る確率はそうならない確率よりも低いので、具体的にどのシチュエーションを保障したいかを明確にして、商品選択することが非常に重要です。

保険で備えなくても抱えられる経済的リスクは貯蓄などで対応するものとして、費用対効果の高い保障にはお金を使いつつ、次回書いていく③長生きのリスクに備えていくのが資金効率のいいお金の使い方かなと思います。

 

記事を書きながら、もう少し各項目を深掘りしていきたいなと感じましたので、おいおい別記事にしていこうと思います。