現役 保険営業マンの保険備忘録

保険の選び方や保険業界の裏側など、保険業界に関わって学んだことを備忘録的に書いています。

確率の話

保険屋さんのトークで「〇〇になっちゃったら大変じゃない?」というものがあります。

例えば、「介護状態になったら大変じゃない?」とか、「万が一旦那さんがお亡くなりになったら大変じゃない?」とかいうやつですね。

これは「可能性」の話をしているわけですが、可能性と同時に非常に重要なのは「確率」です。

「飛行機に乗るなんて、万が一落ちたらどうするの?」と言っている人がいたらどう思いますか?

 

米国の国家安全運輸委員会(NTSB)の調査によると、飛行機に乗った時に墜落する確率は0.0009%だそうです。

英航空安全財団の調べによると、2013年までの過去10年間に「全世界」で起きた航空機事故による死者数の年平均は676人。

「日本」の交通事故での死者数は、警察庁の発表では、2017年だけで3,694人。

この数字だけでも、圧倒的に飛行機の方が死亡確率が低いことがわかります。

「飛行機に乗るなんて、万が一落ちたらどうするの?」と言っている人がいたら、その人は普段の生活をどうやって送るのか、ということになってしまいます。

 

たしかに万が一の事態に備えることは必要ですし、保険は自分が抱えきれないリスクに備えるためのものということが大前提です。

安全運転をしていれば交通事故を引き起こす確率は決して高くはないでしょう。

しかし、自分が気をつけているだけで防げないのが交通事故なわけで、万が一自分が加害者になってしまったら数千万円~億単位の損害賠償責任を負うこともあります。

それを代わりに背負ってもらうための自動車保険です。

 

2017年は交通事故の発生件数が472,069件=約50万件として、免許取得者を8,000万人とすると160人に1人が1年間で交通事故を起こすということになります。

1年間で160人に1人が交通事故を起こしますが、10年経過すると単純に16人に1人が加害者になるという計算です。

もちろん、事故は1回起こしたからといって2回目を起こさないという訳ではなく、むしろ運転マナーが悪い同じ人が何回も加害者になるというのは珍しいケースではありませんので、こんなに単純に考えられることではありませんが、車の運転期間が長くなればなるほど、事故の加害者になる確率が増していくのはわかると思います。

 

個人的には発生確率の低いことに必要以上にこだわって備える必要性は低いと思っています。

例えば、20代の人が10年間の定期保険で介護保障を付けるようなことはあまりオススメしていません。

発生確率が非常に低いですし、万が一そういう事態に遭遇するにしても、交通事故の確率が高いと思うので、それなら自動車保険で備えることができるからです。
ただ、間違って欲しくないのは、「必要ない」のではなく、「優先順位が低い」ということです。

発生確率が低いとしても、その備えの必要性を強く感じている場合は優先順位が高くなります。

 

大切なのは、まずは「何に備えたいのか」という「保険の目的」を明確にすること

そして、発生確率と費用対効果を考慮して、商品選択をすることです。

 

保険屋さんは厚い保障を売るのが仕事という側面があります。

だから、可能性の話はしても確率の話はしないケースが多いです。

上記の2つのポイントを押さえて、不要な保障にムダな保険料を払うことのないように注意していきましょう。